海外活動

海外活動

 タンザニアでは増え続ける人口とそれに伴う薪炭材需要の増大等により、毎年42.6万ha、東京都の2倍の面積にあたる森林が減少しているといわれています。近年の森林減少率は年間1.2%で、このまま減少が続けば80年以内にすべての森林を失ってしまうことになります。森林の減少は薪炭材の不足や雨量の減少、飲料水の枯渇、土壌の流出や作物の生産性低下となって現れており、そこに暮らす人々の生活を圧迫しています。
 こうした環境の荒廃を少しでも防ぎ、人々の生活を守るためには、これ以上の森林減少を少しでも食い止め、さらには増やしていくための取り組みが欠かせません。そのためには、森林減少要因の多くの部分を占め、また同時にその結果として生ずる土地の生産性低下など、その影響をもっとも大きく受ける村人レベルでの取り組みが重要となってきます。
 そこで私たちタンザニア・ポレポレクラブは、現地の村人たちが作ったNGO“TEACA”(Tanzania Environmental Action Association)と協力して、次の2つのことを目指して活動に取り組んでいます。

(1) 現地の環境の荒廃を招くことなく、村人達が少しでも安定した生活を送れるようになること
(2) 村人自身の手による自主・自発的、持続的な村落植林活動を実現すること

上記の目的を実現するために、私たちは次の3つの分野に重点的に取り組んでいます。


・村落植林活動

・現地活動の自立

・社会開発・生活改善

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村落植林活動

1.小規模苗畑グループ支援

(1) 小規模苗畑グループ支援
 現地では人々が生きていくためには木を消費せざるを得ない。人口が増え続ける中で、人々が日々のエネルギーの大半を薪に頼らざるを得ない、という現地の生活スタイルそのものはほとんど変わることがなく、これが森林の減少を招く大きな要因となっている。そして森林の減少は様々な形で村人の生活に影響を及ぼし始めている。

 こうした中で、自らの力で自然の荒廃を少しでも食い止め、自分たちの生活環境を少しでも改善していこうと努力している村人たちもいる。私たちが1997年から協力しているTEACAも、そうした村人による現地NGOの一つである。彼らはキリマンジャロ山中にあるテマ村のオリモ小学校を拠点として、村人や女性そして子供たちとともに、山麓一帯で植林を進めている。

 キリマンジャロ山麓はタンザニアの中でも雨量に恵まれ、まだ多くの緑に囲まれているが、開墾や薪炭材伐等のため徐々に森林を失いつつある。人の侵入の容易な山麓裾野部(とくに南東部)斜面はすでに丸裸となっており、毎年雨期になると大量の土砂流出を引き起こしている。TEACAの活動拠点であるテマ村周辺でも、雨量の減少など気象の不安定化や伝統灌漑水路の枯渇などの影響が現れ始めており、自分たちの生活環境の変化に気付き、危機感を覚えた村人たちは、村に広がる森林伐採跡地すべてを森に戻そうと植林に立ち上がった。

 私たちはTEACAと協力して、このテマ村における村落植林活動を支援している。これまでの取り組みは、大きく分けて3つの段階に分けられる。活動開始当初は、村人の組織化と、TEACA自体の育苗・植林の技術面での知識、経験と実力を積み上げていく段階。植林樹種も外来樹を中心に、村人のニーズにマッチし、なおかつ現地の気候、土壌条件に適合し、植林後良好な活着を得られる樹種を探る状態が続いた。第2段階は植林樹種のバラエティーを増やし、さらに村落植林活動を比較的条件の共通する他地域へ展開していく段階。そして現在は、植林にあたっては現地自生種を多く取り入れ、また村落植林活動もより条件の厳しい半乾燥地へと展開しつつある。

 テマ村のオリモ小学校に開設された育苗所では、果樹、コーヒー等も含め30種類を超える苗木が生産されており、植林以外にもテマ村の村人や近隣の村、学校、教会等への配布(一般苗木)、販売(果樹等)も行っている。

 学校では子供たちに植林の大切さ、苗木の育て方を知ってもらうために、育苗を学校の授業に取り入れている。育苗ポット用の土運びなど、重労働は村の大人たちが分担。そして植林は女性も含め、村全体で取り組んでいる。

 これまでにテマ村で村人たちによって植林された木は、すでに11万本を超え、配布、販売された苗木も27万本に達しようとしている(2002.6現在)。TEACAが植林を開始した当初に植えられた木はすでに樹高15mを超え、かつて裸地だった山肌には木々が涼しげな影を落としている。

 私たちはこうした村人たちによる植林活動を、キリマンジャロ州、アルーシャ州、ダルエスサラーム州の3州10ヵ所で支援している(=村落植林活動の地域展開)。

植林活動

(2) Old Moshi植林
 テマ村のすぐ隣、谷を一つ挟んで向き合うOld Moshi。このTEACAの足元ともいえるOld Moshi地区は、しかし約60haある尾根のすべてが過去行われた森林伐採によって完全に裸地化している。テマ村での植林活動は村人の参加度や技術面でもほぼ軌道に乗り、村落植林活動の地域展開に取り組んでいるTEACAにとって、現在Old Moshi地区がキリマンジャロ山麓における最大の村落植林の取り組み対象地となっている。

 地理的、気象的にはこれまでの村落植林の水平展開と位置付けられるOld Moshi地区だが、土地の利用形態、使用権の問題が複雑に絡んでおり、森林保護区を中心としたこれまでのような村、あるいは村人全体での植林への取り組みという手法は、まったく通用しない。そこで同地域での村落植林の展開に当たっては、
  @ 土地所有に関するマッピング調査
  A 個々の村人の苗木需要調査
  B 村でのルール作り
の3点を組み合わせて実施している。土地の利用、使用形態に合わせて植林を実施するとともに、村人の苗木に対するニーズに個別に対応していくことで、植林の取り組みをそれぞれの村人に任せていく。そして植林後の土地、樹木の管理、利用方法について村でルールを作ることで、植林地を全体としてカバーしていく。

 この手法による植林は2001年の大雨期(4月〜)から実施されているが、従来の手法では土地利用者による植林後の苗木の引き抜きなどが頻発したが、いまやその土地利用者から「もっと苗木をくれ」という強い声があがるまでになっている。TEACAとしては土地利用者の樹種に対する声に十分耳を傾けながら、一方で供給する苗木の数量はある程度しぼり、その分植林後の苗木の管理にしっかり手をかけられるようにしている。それがまた植林後の苗木の高い活着率に結びついている。

(3) 半乾燥地(低標高地)植林 − @ コンタクトファーマー・モデル植林
                   − A 適正樹種確認試験植林

@「コンタクトファーマー・モデル植林」
 半乾燥地にあっても植林意欲の高いコンタクトファーマー(1世帯)をローラー調査で選び出し、そのコンタクトファーマーと協力しながらプロジェクトに取り組む。

 植林は普段からケアのきく家屋、畑回りに範囲を限定して、現地で需要の高い防風、防砂、家畜侵入防止、土壌改良などの目的で、あるいは食用に果樹などの苗木を少数植えるに留める。

 プロジェクトではそれらを確実に根付かせていくことで、生活環境を改善していくことに最重点を置いて取り組む。これは半乾燥地域の村人の植林意欲が低いことから(=植えても枯れてしまう、放牧されている家畜に食べられてしまう等の問題から、これはある意味仕方がないこと)、そうした状況下でも高い植林意欲を持っているコンタクトファーマーと協力して、その生活環境の確実な改善、向上を図り、植林による結果を具体的に示していくことで、周囲の村人たちの自発的・内発的な植林への意欲につなげていこうというもの。

 キリマンジャロ山中のような村人総出での植林は、村人の植林に対する意欲の違いから当面は困難であり、また例え村人の協力が得られたとしても、ケアのきかない大規模な面積への植林は、現地の雨量・家畜の食害等の問題を考えると、活着率はゼロか、限りなくゼロに近づくだろう。せっかく多くの村人たちがやる気を出して木を植えても、結局枯れてしまうことが分かれば植林への意欲は一気に失われてしまう。これでは藪蛇である。結果を確信できないセミナーや教育活動といった普及啓蒙策でも、リスクを負いたがらない村人たちは、支援は期待してもそれ以上の行動にはなかなか移ってはくれない。コンタクトファーマーと協力して、規模は小さくとも、確実に具体的結果を示していけるモデルを築くことが、ここでの戦略となる。

 また、このコンタクトファーマー・モデル植林では、(1) 雨水利用、(2) 養蜂、(3) 改良カマド、(4) 省水野菜農法の指導・支援など、植林に限らず、「自立及び持続性の確保」、「生活の改善・向上」を同時目的として、複合的に取り組んでいく。こうした複合的なアプローチを取るのは今回が初めてのケースであり、TEACAがこれまで蓄積してきた知識、ノウハウがここでも試されることになる。

A「適正樹種確認試験植林」
 モシ近郊の半乾燥地にあるNdorobo Hillで、試験プロットを定め、乾燥に強い9樹種45本を選び出し、植林比較試験を行うもの。TEACAもキリマンジャロ山内の植林には強いが、乾燥地での植林はまだまだ経験が浅い。ここで半乾燥地植林の経験と実績を積むことで、知識と技術の蓄積を図っていく。

 半乾燥地におけるこれら@、Aの取り組みとも、活動はまだ緒に付いたばかりであり、今後数年をかけて、試行錯誤を繰り返しながら取り組んでいくつもりである。

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現地活動の自立

現地活動の自立支援

 現地で村人たちが目指すもの、そしてその実現に向けた取り組みの主役は、村人たちです。私たちの役割は、村人たちが中心となって、それを実現していけるよう、彼らを側面から支援すること、そして共に道を探っていくことだと考えています。

 どんな支援や協力も、未来永劫を約束できるものではありません。現地の村落植林活動の問題は、それが資金的に自立できていないという点にあります。技術は残せても資金は残せません。

 一時的に資金と資材、人と技術をつぎ込めば、確かにある程度の緑化は可能でしょう。しかし一方で、人口が増え続け、人々が木を消費しなければならないという構造自体は少しも変わった訳ではありません。外部の支援に頼った植林活動は、支援が終了した段階で立ち行かなくなります。需要のみがあって供給を絶たれれば、植林地に植えられた木もいずれ再度の伐採圧力に晒され、木を植える以前の姿に戻ってしまうでしょう。支援や協力によって一時的に緑化のお手伝いをすることが出来たとしても、それが持続的でないことが問題なのです。

 限りある外部からの支援によらず、その地に住み、暮らしている人々の自主、自発的意志によって、たとえそれがどんなに規模は小さくとも、持続的に取り組まれていくこと、そしてそうした活動が広くその地域、その国土全体で取り組まれるようになることが大切だと考えています。

 私たちの取り組みも、現在だけでなく、その先のことまで見据えて取り組むこと、すなわち現地活動の持続性を確保していくことが重要です。

 タンザニア・ポレポレクラブでは、村落植林活動への取り組みを、たんに植林への支援のみに終らせるのではなく、同時にその持続性の確保を目標に掲げて取り組んでいます。

 私たちは以下の取り組みにより、現地で村人たちが自力で収入を得、そこで得た資金を彼らの植林活動に再投資出来るようにしています。最終的には現地活動の完全な自立を目指していますが、現在までに、必要な資金の半分程度まで確保できる見通しとなりました。
 (1) 苗木販売
 (2) 小規模収入向上プロジェクト

(1) 苗木販売
苗木@一般販売
 TEACAの収入向上の取り組みとして最も古くから実施されているもの。無料配布される一般樹種に対し、果樹や飼料木、コーヒー苗木、花卉類等は販売されている。比較的簡単に取り組めるが、販売対象のほとんどが村人で、安い値段で販売されるので、それほど大きな収入には結び付かない。ここで大きいのは、農業局等政府機関からの受注が見込めるコーヒー苗木である。
 
A苗木販売戦略苗畑
 苗木販売を強化し、収入の柱として育てるため、苗木販売に目的を特化した戦略苗畑を立ち上げた。ダルエスサラーム州のテゲタ苗畑がそれにあたる。
 苗木販売用の戦略苗畑は村落植林を目的としたものではないため、基本的に村や村人グループに基盤を置かない。人口が集中し、装飾樹などの需要が高く、かつ販売価格を高く設定できる都市部に立ち上げた。
 当初このテゲタ苗畑は、行政とのタイアップ、都市部での装飾樹及び緑化用苗木の需要を見込んでいた。しかしそれらの需要は結局一時的なものに終わってしまい、現在はキリマンジャロ出身の現地NGO・DAMBOの代表であるルミシャ・キマンボ氏が、Mabwe Pandeで進めている植林用苗木の生産・販売にほぼ特化されている。とはいうものの苗木の需要規模は年間最低1万5千本であり、TEACA最大の植林地であるOld Moshiのそれを優に上回る規模である。
 Mabwe Pandeでの植林の主力樹種はチークであり、その生産技術力がテゲタ苗畑の成功の鍵を握っている。

(2) 小規模収入向上プロジェクト
養魚池@養魚池
 養魚池は、縦横5m、深さ1m程の素掘りの池でテラピアの養殖を行うものだ。テラピアの養殖は技術的にも比較的容易で魚の成長も早く、自然増殖が可能なため必要な資金がほぼ初期投資に限られる、といった多くのメリットを持っている。
 
 現地では味が良く、唐揚げなど調理方法によっては日持ちのきく魚の需要が高いが、湖沼地域を除く内陸部は一般に鮮魚の入手は困難で、どうしても魚が欲しければ街まで買いに行くしかない。しかし村人たちとって街まで買いに行く交通費は無視できない負担であり、実際に魚を買いに街まで行く者はほとんどいない。そこで養殖、繁殖ともに比較的容易で成長が早く、しかも味の良いテラピアの養殖プロジェクトを開始した。稚魚を大きく育て、それを売ることで収益を得られるようになる。
 
 養魚池はTEACAの活動拠点であるテマ村のオリモ小学校に立ち上げたが、オリモの養魚池はそこから直接的に収益をあげていこうというものではない。テラピアは熱帯性の魚で、キリマンジャロ山中のような標高の高い、朝晩の気温の低いところには本来向かない。しかしTEACAによる今後の植林活動の地域展開を睨んだ場合、その展開先の多くは低標高の高温地となる。そこでの村落植林活動の持続性確保を考えた場合、TEACAが養殖技術を持ち、村落植林のサポートと同時に、その自立策の一つとして地域住民に養魚池を提案、指導できるようになることは重要である。
 
 またテマ村においても、回りの村人にノウハウを提供することで、彼らの収入向上、栄養改善につなげていくことができ、さらに村に緊急時の蛋白源を確保していくことにもなる。

養蜂A養蜂
 小規模収入向上プログラムによるもう1つの取り組みは、養蜂プロジェクトである。現地で植えている木の中には育つと大変良い蜜を出す木“蜜源樹”が含まれている。それらの木がある程度育って花を咲かせるようになると、その木の回りで養蜂を行うことが出来るようになる。とくにキリマンジャロ山麓で取れるハチミツは品質が良く、良い収入をもたらすことになる。
 
 また同時に、この養蜂プロジェクトは、従来薪炭材や建築材として売るために「木を切ること」で収入を得ていた村人に、「木を植えること」で収入を得られるようにするための代替案を示したものでもある。村人たちに「木を切るな」と言うことは簡単であるが、そのことは同時に、ただでさえ余力のない生活をおくっている彼らの、貴重な収入源を絶つことをも意味する。彼らの立場に立つなら、少なくとも彼らが得ていた収入に見合うだけの代替案を、こちらは示していかなければならない。養蜂はそのアイデアの一つでなのである。
 
 木が育てば誰でも養蜂箱を設置することができ、そこから収入を得られるようになる。もちろん多くの木があればそれだけ多くの養蜂箱を設置することができる。しかも木は切ってしまえばそれきりであるが、養蜂は継続的にそこから収入を得ることが出来る。
 
 現地カウンターパートのTEACAではスタッフを養蜂研修に派遣し、養蜂技術の習得に努めるとともに、最新の養蜂箱の制作技術も習得しており、村人の希望に応えていつでも技術指導や養蜂箱の供給が可能な態勢を整えている。
 
 TEACAもすでに植林地2ヵ所に対して養蜂箱を設置完了している。そこはかつて森林伐採によって裸地化していた場所であるが、現在は植林によって平均樹高10mを超す木々によって覆われている。これまでは住民に対する植林活動啓蒙のための展示林として機能を持たせてきたが、今回考えをさらに一歩進め、展示林として残していくだけでなく、養蜂も行う生産林として積極的に活用していくことにしたものだ。
 
 今後、設置された養蜂箱を村人たちが実際に目にし、そこから得られた収入を耳にしたとき、彼らの植林に対する大きな動機、意欲につなげることができると期待している。そして将来的に、この植林地を、村落植林による養蜂を中心とした、生産林のモデルとして完成させていきたいと考えている。

この活動の自立の問題は、より根本的には村人の収入向上に向けた取り組みであり、同時にそれは彼らの生活改善と直接結び付いた活動といえる。

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社会開発・生活改善

 TEACAは今後、村落植林活動を担う現地NGOとして、何よりもまず自らの活動の自立を目指すことになる。しかしその自立は、単にTEACAが取り組む村落植林活動の自立のみを目指すものではない。人々の生活と環境は密接不可分の関係にあって、そのどちらか一方の取り組みだけでは十分とはいえないからである。テマ村においても社会開発、生活改善に対する多様なニーズが存在する。TEACAが目指す自立は、自らの自立によってもたらされる成果を、地域NGOとして、その地域社会のために還元していけるようになること、すなわち村や村人の社会開発、生活改善のニーズに積極的に取り組み、主導的役割を果たしていけるようになることである。
 TEACAではこれまでにもオリモ小学校の全面改修を担うなど、地域のニーズに応えてきているが、社会開発・生活改善のための取り組みとして、現在TEACAが重点的に取り組んでいるのは、以下の取り組みである。

 (1) バイオガスシステム
 (2) 改良カマドの普及
 (3) 乳牛優良種の導入
 (4) 穀物貯蔵の実施

(1) バイオガスシステム
バイオガスシステム用バーナー タンザニアでは現在年率1.2%ともいわれる勢いで森林の減少が続いている。1.2%といえばあと80年で国土のすべての森林を失ってしまう数字である。その減り続ける森林に対して、木を植えることで直接“緑を増やす”ことを目的として取り組んでいるのが植林である。これに対してバイオガス・システムは、代替エネルギーを提示することで、森林減少の主要因の一つ、薪炭材伐採を減らす、すなわち“緑を減らさない”ための取り組みと位置付けられる。
 
 バイオ・ガスシステムとは、糞尿を地下に埋設した反応タンクの中でバクテリアによって分解し、発生したメタンガスを炊事や明かりのための燃料として利用するものである。このシステムを導入すれば、学校給食の炊事用に毎日使われる薪消費をゼロにすることができ、パイプを拡張すれば学校の教室の明かりなどにも利用できるようになる。
 
 通常バイオ・ガスシステムでは家畜(牛)の糞尿を利用する。牛を利用した場合、家畜として牛を飼っている所ではタダで入手できる牛の糞尿をそのまま使え、さらにガスを発生させた後に排出される残渣は滅菌状態の良質の肥料として、再度利用が可能となる。
 
実際の使用状況 バイオ・ガスシステムは、それが自然循環系をうまく利用したエネルギ−・システムであることから、炊事や明かりのための燃料が確保されるのはもちろんのこと、ランニング・コストがかからない、廃棄物が出ない、発生残渣の2次利用が可能、そして何より自然に対し圧力をかけることがない(薪炭材のために木を切らなくて済む)といった多くのメリットを持っている。自然に優しい持続可能なシステムということができる。
 
 TEACAがオリモ小学校に導入したのは、同じバイオ・ガスシステムでも、人と牛の糞尿併用のシステムである。これは、300人からの生徒の給食用燃料を牛のみを利用したシステムで確保しようとすれば、かなりの数の牛の購入が必要となり(牛が死ねばまた購入しなければならない)、さらに毎日その牛のための飼料を採ってこなければならず、これは大変な重労働であるばかりか、結果として自然の破壊につながる。この点、人・牛併用のシステムであれば、学校という場所柄、人の数は確保でき、さらに牛のように飼料を集める必要もない。
 
 このようにバイオ・ガスシステムは、薪炭材としての森林伐採を防ぐことができ、燃料費を払うことのできない人々にも、持続的に炊事や明かりのための燃料を供給する事が出来るなど、極めて有望な要素を持っているといえる。しかしこのシステム最大のネックは、システムの導入そのものに、村人にはとても手出しのできないコストがかかってしまうことである。いかにその他のメリットが大きくとも、村人の自助努力だけでは実行不可能なものは、決め手となる解決策とはなり得ない。
 
 バイオ・ガスシステムは、たまたま支援を受けられた者が手にすることの出来るものであり、これをすべての村で導入しようとするなら、国家レベルの支援か、もしくは先進国の人々それぞれが支援に立ち上がるしかない。
 
 TEACAがこのシステムを導入するのは、資金的なサポ−トがあってのことではあるが、第1にキリマンジャロの森林を“切らない”ことによって守るための、具体的な手段とするためであり、第2に、森林を守る1つの手段として、様々な方面にデモンストレ−ションしていくためである。

(2) 改良カマドの普及
現地で一般的な三ツ石カマド現地で普及を支援をしている改良カマド バイオガスシステムはメリットも大きいが、多くの村人が手にするには、導入コストがかかりすぎることが最大のネックである。そこでTEACAでは、安価で村人でも容易に製作、設置ができるエンザロタイプ改良カマドの普及を図っている。エンザロタイプ改良カマドは、現地で一般的な三ツ石カマドに比べて、薪の消費量を半分以下にまで抑えることが出来る。
 
 この改良カマドの導入によって、村の女性や子供たちにとって長時間の重労働であった薪集めや、調理時間の大幅な短縮、削減が可能となる。また腰を曲げずに立ち姿勢のまま調理ができる、煙が殆ど出ないなど、健康面でも優れる多くのメリットを持つ。
 
 そして改良カマドの導入は、バイオガスシステムと同様、植林という緑を直接的に増やす取り組みに対して、森林減少の主要因である薪炭材消費を減らす、緑を減らさないための取り組みでもある。

(3) 乳牛優良種の導入
 現地で一般的に飼育されている乳牛は、1日当たりの搾乳量が1〜5ι/日と少なく、ほとんどすべてを子牛への授乳と自家消費で使い切ってしまう。これをより搾乳量の多い優良種の乳牛に切り替えることで、村人たちは余剰分を販売に回し、そこから収入を得ることが出来るようになる。
 
 しかし実際には優良種の乳牛は値段が高く、普通の村人たちは手に入れたくてもなかなか手に入れられないのが実状である。
 
 そこでTEACAでは、村人に対する乳牛優良種の導入を支援している。こうした場合、よく用いられるのが牛銀行の手法であるが、TEACAではローン制度を採用している。牛銀行ではローン制度の利息に当たる部分を雌の子牛で返却するわけだが、TEACAは自身の自立も同時に図っていくため、プロジェクトの実施による内部留保が発生するローン制度を採用することにした。
 
 現地の優良種には3種類あるが、搾乳量、含脂量、牛の性状、飼育方法などの調査の結果、プロジェクトで採用したのはAryshe種(搾乳量約12〜15ι/日)である。村人は手に入れた優良種の牛が子牛を産み、搾乳が可能になったあと、牛乳を売って得た収入の中から少しずつローンを返済していくことになる。子牛は何頭産まれてもその村人のものとなる。
 
 また、このプロジェクトの狙いは、たんに村人が優良種の牛を入手できるように支援するだけではない。今後村の中に優良種の普及が進み、ある程度まとまった量の牛乳が確保が出来るようになれば、将来的には牛乳組合のようなものを立ち上げていくことも視野に入れている。その時は村人の収入向上、生活改善という個人レベルの視点から離れ、村全体としての視点から、村の産業として興していける可能性もある。そうなれば、村の発展や活性化にも大きく貢献でき、また村人の収入をより強化し、安定化させることも出来る。もちろんこれは実現するにしてもかなり先の話である。

(4) 穀物貯蔵の実施
メイズのほかウレジも貯蔵設置中の穀物貯蔵タンク(メイズ用) 現地で、穀物の価格は生産シーズンに応じて大きく変動する。収穫期には低く、種まき〜収穫前の穀物在庫の端境期になると高騰する。村人は収穫期に安い価格で販売し、自分たちの食糧や種まき用の在庫が尽きてしまうと、不足分を高い値段で買い戻さざるを得ない(初めから自分たちに必要な量を取っておければ良いが、差し迫った子供たちの学費などを支払うために、彼らは売らざるを得ない。あるいは初めから必要な量の収穫を得られない)。さらにこのことに加え、現地の穀物の貯蔵がきかない(長期保存が困難)という問題が横たわっている。結局村人たちは収穫期に安い値段で売らざるを得ないのだ。
 
 現地の主食はウガリと呼ばれ、その原料はメイズ(モロコシ)である。モロコシとコメとを比較した場合、それぞれに相対的なメリット、デメリットがあるが、コメの持つ大きなメリットの一つに、その保存性の良さを挙げることが出来る(食糧用、種籾用双方とも)。古米、古々米という言葉があるが、そのこと自体、いかにコメが保存性に優れた穀物であるかを物語っている。古モロコシ、古々モロコシというのは存在しない。
 
 そこで、村に穀物の長期保存がきく貯蔵タンクを設置し、収穫期に市場価格で村人から、あるいは街で貯蔵用穀物を買い取り、逆に不足時には高騰した市場価格より低く抑えた価格で村人に販売していくようにする(高騰しているとはいえ、それもタンザニアの普通の人々による商売であり、市場価格を乱すような極端な低価格での販売はしない)。
 
 このプロジェクトにより、村人はより少ない支出で不足穀物を調達できるようになる。またプロジェクトの実行過程で販売や在庫管理など、雇用を生み出せる可能性もある。そして貯蔵穀物自体、備蓄食糧として、旱魃などの非常時に村人たちに緊急配布することも可能となる。
 
 そしてこのプロジェクトは、TEACAが自己資金を生み出し、自らの自立と、活動の持続性確保とを目指して取り組んでいくものでもある。今後TEACAが地域における社会開発型NGOとして、その成果を地域還元し、村の発展のために先導的役割を担っていくための、一つの足掛かりとなるものである。

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村落植林活動の地域展開

 広域に進む森林破壊に対しては、それぞれの地域、それぞれの村の中で地域住民によって植林活動が取り組まれることが理想といえる。「村落植林活動の地域展開」は、その実現に向けた取り組みであり、TEACAは現在、キリマンジャロ州、アルーシャ州、ダルエスサラーム州の3州で“小規模苗畑グループ”による村落植林活動の支援に取り組んでいる。

 小規模苗畑グループ支援では、各地で熱心に植林活動に取り組みながらも、知識やノウハウ、資材などの不足によって十分な活動が出来ないでいる村人グル−プを対象として、彼らに必要な協力や指導を行っていくことで、そのグル−プが力を付ける後押しをし、それぞれの地域で村落レベルの植林活動を着実に根付かせていけるような支援を行っている。

 その内容は、村落をベースとする小規模苗畑の設置、巡回指導、資材支援、育苗技術指導、地域レベルでの植林の実施フォロー、セミナ−及びスタディ−・ツア−の開催、グル−プ間交流、個別プロジェクトの実施などである。

 こうした一連の協力を通して、TEACAは各村人グル−プの実力をつけ、それぞれの地域に根ざした村落植林活動の地域展開に取り組んでいる。

 小規模苗畑グループの支援実施にあたっては、先行して1〜3年間の対象グループに対する実態調査を行い、その後最終的な判断を行うようにしている。

 TEACAが支援を行っている小規模苗畑グループ(2002年11月現在)

  ・キリマンジャロ州 ・フンブフ小学校グループ
    ・フォイェニ女性グループ
    ・フケニ青年グループ
    ・キランガ女性グループ
    ・サンバライ苗畑グループ
    ・マゲレザ苗畑グループ
    ・ムスフィニモデル苗畑
  ・アルーシャ州 ・キツリゾ女性グループ
  ・ダルエスサラーム州 ・テゲタ苗畑

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